月刊・デンタルニュース

(平成25年8月号)

今月は『摂食嚥下②』をお届けします。
平成22年の「国民生活基礎調査の概況」によると、介護が必要となる原因は脳血管障害が21.5%でトップです。継続的な治療を受けている患者数は全国で133万人にもなります。また摂食嚥下障害の原因の脳血管障害も全体の半数以上を占めています。介護の現場では口から食事が取れない又は制限のある方は少ないかと思います。しかし摂食嚥下障害は、脳血管障害以外にも神経疾患をはじめ、原因となる疾患は50種類以上と多岐にわたり、精神的なもの、薬剤の副作用、入れ歯の問題、加齢による筋力の低下も原因となります。食べることは人間の最も基本的な活動であるだけに、早期の発見と適切な対応が求められます。

訴えが少ない!?

摂食嚥下障害は疾患(病気)ではなく、原因となる疾患があって出現する“症状”の一つです。そのためご本人やご家族からの訴えが少ないという特徴があります。しかし摂食嚥下障害は誤嚥性肺炎・窒息・栄養失調・脱水など、生命の危険に直結する深刻な問題を引き起こします。そのため、ご家族などの介護者が、サインに早く気付くことが重要です。そこで、早期発見のポイントとなる下記のチェックリストを使ってみて下さい。

摂食嚥下障害早期発見チェックリスト

□口の端から食べ物がこぼれる

□飲み込みが悪くなった

□食事のときにむせる、咳き込む

□食べ物がのどにつまった感じがする

□食事の時間が長くなった

口口の端からよだれが出る

□飲み込んだときに声がかすれる

□発熱を繰り返す

むせない誤嚥もあるので注意!!

チェックリストで気になる点があった場合は、もう少し詳しく調べたほうが良いでしょう。それは摂食嚥下障害の約5割にむせのない誤嚥(不顕性誤嚥)が認められるという報告があるからです。
まずは、医師や歯科医師などの医療専門家にご相談下さい。
医師の場合でしたら①摂食嚥下機能の評価(診断)、②脱水・栄養状態の確認、③適切な専門家の紹介などが可能です。
歯科医師の場合なら①摂食嚥下機能の評価、②入れ歯や口腔状態の確認、③飲み込む力を高めるための舌の運動や飲み込みの訓練、④誤嚥性肺炎を予防するための口腔ケアなどが可能です。医療制度の方向が変わり病状が安定すると、その後の療養は在宅へ移行していきます。医療施設では専門家が対応していたキュア・ケアがご家族に移行するという大きな変化が起きます。そこで特に注意しなければならないのが、低栄養と誤嚥性肺炎の予防です。この二つは、誤嚥をせずにしっかりと食事がとれるようにすることと、口腔内を清潔に保つことです。
次号ではこれらの対応方法をご紹介します。

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