(平成28年10月号)

病気や老化によって、食べ物を飲み込みにくい状態や肺の方へ誤って入ってしまうことを嚥下(えんげ) 障害といいます。 食事を楽しめないだけでなく肺炎の原因ともなり、命の危機に直結する深刻な問題です。脳血管障害 をはじめ、神経・筋障害疾患の多くの場合では、日常的に接している介護者が、嚥下は大丈夫かな?と 注意を払うことが重要です。嚥下造影検査は、X線をあてながらバリウムの入った模擬食品を食べて、 嚥下の全過程を観察することができる最も信頼性の高い検査ですが、専門設備やX線被ばく、姿勢の 保持等、欠点もあります。そこで今月はベッドサイドで可能な『嚥下障害の簡易検査』をご紹介します。

1.チェックリスト

最も簡単なものは、介護者等が食事の時に下記の項目をチェックすることです。
1つでも該当すれば各種の簡易検査を行います。

<嚥下障害を疑う症状チェックリスト>
☑食事に時間がかかるようになった
☑食べこぼす
☑口の中に食べ物が残る
□発熱を繰り返す
□食事中や食後にむせる、咳き込む
□食べ物がのどにつまった感じがする
□食べにくいものがでてきた

2.反復唾液嚥下テスト

人差し指でのど元、中指で甲状軟骨(のど仏)を軽く押さえた状態のまま30秒間に連続して唾液 を飲み込んでもらいます。甲状軟骨が中指を乗り越えた場合を1回とカウントし、3回以上であれば正常、 2回以下の場合は、何らかの障害を考えます。

3.改訂水飲みテスト

冷水3mlを舌の下に入れてから飲み込んでもらい、嚥下・むせ・呼吸の状態を判定基準を使って判断します。

<判定基準>
嚥下なし、呼吸切迫、むせる         ・・・1点
嚥下あり、呼吸切迫             ・・・2点
嚥下あり、呼吸良好、むせる又は湿性嗄声   ・・・3点
嚥下あり、呼吸良好、むせない        ・・・4点
4点の場合に加え空嚥下が30秒以内に2回可能 ・・・5点

4.フードテスト

ティースプーンで1杯分のプリンを食べて飲み込んでもらいます。水飲みテストと同様、上記の 判定基準を使って判断します。 唾液、水、プリンを飲む時では、それぞれ異なった動きとなりますので、2から4の検査を複数 組み合わせることで、かなり正確に判別することができます。嚥下障害であると判断された場合は、 食事のメニュー、姿勢、食べるペース等を工夫することや嚥下訓練(口腔リハビリ)を行うことで改善 が期待できます。

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