(2019年9月号)

海外では日本食のブームが続いています。その人気の秘密は健康的で低カロリーであることがあげられます。 2013年に和食が世界無形文化遺産に登録されたことも大きな要因の一つです。一方日本国内では即食可能な インスタント食品やレトルト食品の消費が増加していて、本来の”理想的な栄養バランス”と言われる一汁三菜を 基本とした日本の食事スタイルは大きく変化しています。神奈川歯科大の斉藤滋元教授によると現代は軟食の 時代であり日本人の咀嚼回数は戦前までの約1500回/食と比較して半分以下の約700回/食にまで減少しています。 よく噛むことは健康面で良いことばかりです。そこで今月は『咀嚼と唾液』についてお届けしたいと思います。

■噛むことのメリット

1.消化吸収を助ける!

よく噛むとその刺激が脳に伝わり唾液をはじめとした消化液の分泌が大幅に促進されます。そのため胃腸に過度な 負担をかけることなく、栄養分を速やかに消化吸収することができます。

2.脳の働きを活性化!

噛むことで唾液の分泌が促進されて、色々な味覚が脳を刺激します。また噛む時の顎の咀嚼運動は脳の血流量増加、 つまり酸素と栄養が十分に供給されて脳が活性化して認知機能の維持改善になります。

3.ストレスの解消にも!

顎や歯の病気のために噛むことができない人は大きな欲求不満を示すことがあります。噛む刺激は人間の大事な欲求でもあり、 ストレス解消にもなります。

4.歯科疾患の予防に役立つ!

噛むことによって大量に分泌される唾液には、歯に付着した食べカスを洗い流したり歯の再石灰化を促進してむし歯に なりにくくしてくれます。また歯ぐきの血流を改善し、歯周病を防いでくれます。

5.言葉の発音がはっきりする!

噛むことは口の周りの筋肉を使う運動です。よく噛むと顎や口の周りの筋肉が発達し豊かな表情ではっきりとしたきれいな 発音ができます。

■唾液にはすごい作用がある

噛むことによって口腔内の耳下腺、顎下腺、舌下腺という3大唾液腺から安静時の10倍以上の唾液が分泌されます。 唾液には消化酵素の働きだけでなく、体内への細菌侵入を防ぐバリアとしての役割もあります。唾液中には細菌を溶かす 作用のあるリゾチームや細菌の繁殖を抑制するラクトフェリン、細菌に結合して感染を抑制する免疫グロブリンが含まれています。またペルオキシターゼには食品添加物や 魚の焼け焦げをはじめとした発がん性物質のほとんどに対して、抑制的に働くことがわかっています。さらに老化現象等の 原因として身体に悪影響となる活性酸素を抑える作用があると言われています。そのためよく噛むことで唾液の分泌が促されると、 がんの予防や老化防止にも効果的と言われているのです。

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